ABOUT DRONE

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ドローン飛行申請は「許可」と「承認」が必要

ドローンを飛行させるには、許可・承認を取らなければならない場合があります。では、ドローンを飛行における「許可」と「承認」の違いは何でしょうか?

「許可」と「承認」の違い

「許可」と「承認」、一般的には同じ意味合いのようなイメージですよね。しかし法律用語では、厳密には意味が異なります。どのような違いがあるのか、順番に見ていきましょう。

 

まず「許可」については、行政法学上では「法律行為的行政行為」に分類され、その中の「命令的行為」というものにあたるとされています。行政行為とは、行政庁が法律の定めに従った判断に基づいて、国民の権利義務その他法的地位を具体的に決定する行為のことをいいます。

 

その中でも「許可」は、すでに法令によって規定されている一般的な禁止を特定の場合に解除して、適法に一定の行為をさせる行為のことを意味します。法律を学んでいない方には、ちょっと難しい話ですよね。では許可には他にどんなものがあるかというと、自動車運転の免許、飲食店の営業許可、建築の許可などがあります。具体例を思い浮かべるとイメージしやすいのではないでしょうか?

 

道路は本来勝手に車で走ってはいけないところなので、道路交通法で規制されており、許可を得て免許を取得すれば運転することができるようになります。それと同じように、ドローンの場合も空は様々な規制があり、勝手に飛行機やドローンなどを飛ばしてはいけません。制空域は原則として禁止されているので、許可を得なければ飛行できません。車の場合は道路交通法で決まりが定められていますが、ドローンの場合は航空法で規制されています。

 

一方「承認」はどうでしょう。許可とは違って、行政法学上の行政行為には、実は承認は明確な定義がありません。一般的な解釈としては、行政庁が一定の行為又は事実の存在を、許諾または肯定することとされています。ドローンの場合でいうと「定められた飛行ルール以外の方法で飛ばすならば承認を得てください」と言及されるように「承認」は、行政庁が一定の行為や事実を認めることを意味します

 

他に関税法にも税関長の「許可」と「承認」という文言もあり、具体例でいうと国民年金の保険料追納の承認、厚生年金の一括適用事業所の承認などがこれに該当します。

ドローン飛行の「許可」とは

ドローンの飛行については、航空法により規制されているエリアが指定されています。これらの規制区域については、航空法による許可を受けた場合のみ飛行が可能となります。改正された航空法132条では次のように書かれています。

 

航空法132条(飛行の禁止空域)

1項
何人も、次に掲げる空域においては、無人航空機を飛行させてはならない。
一 無人航空機の飛行により航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがあるものとして国土交通省令で定める空域
二 前号に掲げる空域以外の空域であって、国土交通省令で定める人又は家屋の密集している地域の上空

2項
前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全を損なうおそれがないものとして国土交通省令で定める飛行を行う場合
二 前号に掲げるもののほか、国土交通大臣がその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないと認めて許可した場合

 

つまり、この条文にあるように、「国土交通大臣がその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがない」場合に「許可」がなされるということになります。なお、同条1項にある国土交通省令も合わせて読むと、無人航空機の飛行規制空域は以下の通りです。

 

  1. 空港等の周辺空域
  2. 人または家屋の密集している地域上空
  3. 地表または水面から高さ150m以上の空域
  4. 緊急用務空域

 

このうち4.の緊急用務空域は許可を取ることができませんが、その他の①②③は、許可をとることで飛行可能な空域となります。またドローンの許可申請においては、下記の空域で飛行する場合には、許可を取れば飛行が可能になります。

 

  • 人口集中地区(DID):②の人又は家屋の密集している地域に該当
  • 高度150メートル以上の空域:③の航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがある地域に該当
  • 空港等周辺の空域:③の航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがあるに該当

 

したがって、これらの空域でドローンを飛行させたい場合は、安全性を確保し、国土交通省に「許可」申請を行う必要があります。つまりドローンの飛行の「空域」に焦点をあてたものが「許可」とイメージしましょう。

ドローン飛行の「承認」とは

では、ドローンの「承認」はどうでしょうか?「承認」という文言が航空法上のどこで使われているかというと、飛行の方法に関する条文(最後の1文)に登場します。

 

航空法132条の2(飛行の方法)

1項
無人航空機を飛行させる者は、次に掲げる方法によりこれを飛行させなければならない。
一 アルコール又は薬物の影響により当該無人航空機の正常な飛行ができないおそれがある間において飛行させないこと。
二 国土交通省令で定めるところにより、当該無人航空機が飛行に支障がないことその他飛行に必要な準備が整っていることを確認した後において飛行させること。
三 航空機又は他の無人航空機との衝突を予防するため、無人航空機をその周囲の状況に応じ地上に降下させることその他の国土交通省令で定める方法により飛行させること。
四 飛行上の必要がないのに高調音を発し、又は急降下し、その他他人に迷惑を及ぼすような方法で飛行させないこと。
五 日出から日没までの間において飛行させること。
六 当該無人航空機及びその周囲の状況を目視により常時監視して飛行させること。
七 当該無人航空機と地上又は水上の人又は物件との間に国土交通省令で定める距離を保って飛行させること。
八 祭礼、縁日、展示会その他の多数の者の集合する催しが行われている場所の上空以外の空域において飛行させること。
九 当該無人航空機により爆発性又は易燃性を有する物件その他人に危害を与え、又は他の物件を損傷するおそれがある物件で国土交通省令で定めるものを輸送しないこと。
十 地上又は水上の人又は物件に危害を与え、又は損傷を及ぼすおそれがないものとして国土交通省令で定める場合を除き、当該無人航空機から物件を投下しないこと。

2項

前項の規定にかかわらず、無人航空機を飛行させる者は、次に掲げる場合には、同項第五号から第十号までに掲げる方法のいずれかによらずに飛行させることができる。

一 前項第五号から第十号までに掲げる方法のいずれかによらずに無人航空機を飛行させることが航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全を損なうおそれがないものとして国土交通省令で定める場合
二 前号に掲げるもののほか、国土交通省令で定めるところにより、あらかじめ、前項第五号から第十号までに掲げる方法のいずれかによらずに無人航空機を飛行させることが航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全を損なうおそれがないことについて国土交通大臣の「承認」を受けて、その「承認」を受けたところに従い、これを飛行させる場合

 

 

上記の条文を読むと、何度も「方法」という言葉が出てきますよね。つまりドローンの飛行の「方法」に焦点をあてたものが「承認」になります

 

ドローンの承認は、許可とは違って場所は関係ありません。飛行方法によっては、国土交通大臣から承認を得る必要があります。では具体的にどのような方法で飛ばす場合に承認が必要なのかというと、下記の6パターンになります。

 

 

  • 夜間飛行:基本的にドローンは日中飛ばすこととなっているので、夜間の飛行には承認が必要です。夜間の定義は、日の出から日没の間「以外」とされており、国立天文台が発表する自国で確認できます。
  • 目視外飛行:ドローンは本来、目視で確認できる方法で飛ばさなければいけません。ですので操縦者から機体が見えない状態で飛ばす場合は、承認を得る必要があります。モニター画面を見ながら、またゴーグルをつけての操縦などあがこれに当たります。
  • 人又は物件との距離が30m未満の飛行:人や車、建物から30m未満で飛行するのは危険が伴うので、この場合も承認が必要です。物件というのは住居や自動車やビル、工場、倉庫など、屋外にあるものはほとんどがこれにあたります。
  • イベント会場上空の飛行:お祭りやイベントなどで人が多く集まる場所で飛行するのも危険なので、承認を得なくてはいけません。過去に墜落した事故などもあり、かなり厳しく規制されています。
  • 危険物輸送:危険物というと高圧ガス、引火性の物質、放射性物質などになります。また農薬の添付も、危険物として承認が必要となります。墜落などしたら被害が大きい為、こちらも承認は必須です。
  • 物件投下:ドローンから何かを投下することは、誰かに危害を与えたり、バランスを崩して墜落する危険などがある為、こちらも承認が必要です。農薬の散布もこれにあたります。またドローンを使った配送は、物を投下するわけではないのでこちらには該当しません。

ドローン飛行時や申請の注意点

「許可」や「承認」でもふれたように、ドローンを飛行させるには様々な決まりが設けられていて、それに従う必要があります。空域に関係なく禁止されているものは、たとえば飲酒時の飛行禁止、飲酒時の飛行禁止などです。それに従わなかった場合、航空法には罰則規定も設けられています。航空法違反時の罰則には懲役刑はありませんが書類送検はあります。また50万円以下の罰金も発生するので、必ずルールは遵守しましょう

 

当然必要な許可や承認を得なかった場合の罰則もありますし、一度申請したら終わりというわけではなく、変更や更新が必要な場合もあります。ドローンには小型無人機等飛行禁止法、道路交通法、民法などドローンを規制する法律は航空法以外にも様々なものがあります。知らずにうっかりと違法な飛行をしないように気を付けましょう。

 

これまで話してきたように、「許可」と「承認」は、行政法学上や行政庁の中で分けられてはいますが、曖昧な面も多く、申請する側からすればあまり変わりはないと思っても差し支えないかと思います。ざっくりとドローンを飛ばせる「場所」については「許可」、飛ばす「方法」については「承認」と理解しておきましょう

 

法律上では使い方は異なりますが、実務ではあまり変わりません。飛行規制区域を許可なしで飛ばした場合も、飛行ルールに違反した場合もどちらも罰則規定があるので、しっかりと「許可」「承認」手続きを踏んで飛行させることが重要です。

ドローン飛行申請について

ドローンの飛行許可・承認の申請はDIPSでオンラインですべて完結することができます。DIPSとは、国土交通省のドローン情報基盤システムで、無人航空機の飛行許可・承認の申請、事故等報告等ができます。他の記事もぜひ参考にしてください。

 

▶︎ DIPS(ドローン情報基盤システム)

▶︎ ドローン飛行許可のオンライン申請

▶︎ ドローン飛行許可が必要なケース

▶︎ 人口集中地区・住宅密集地のドローン許可を解説

 

監修者
バウンダリ行政書士法人
代表行政書士 佐々木慎太郎(Shintaro Sasaki)

日本屈指のサポート実績を誇る、ドローン法務のプロフェッショナル

飛行許可申請をはじめ登録講習機関の開設やスクール運営、監査実施、法務顧問、事業コンサルティングなど、ドローン事業を幅広く支援している。
2022年の年間ドローン許認可案件は5,300件、登録講習機関のサポート数は100社を突破。

ドローン安全飛行の啓蒙活動として、YouTube「ドローン教育チャンネル」を開設するなどSNSで最新の法律ルールを積極的に発信している。著書に『ドローン飛行許可の取得・維持管理の基礎がよくわかる本』(セルバ出版)がある。